○● 妙法 ●○
最後の龍宮伝説
作 KISANGI



本文


はじめに

「最後の龍宮伝説」の序章として 壺中の龍王 が置かれているので、
それをまず読んでからこの物語へと入って来て欲しいと願っている。

その「壺中の龍王」の中でのクライマックスのひとつ。
ONIが奇妙な空間へとつりあげられた一瞬というのがある。

この伝説は、その一瞬の中で始まる。



こくう
《 虚空 》

ONIは、懐かしさと同時になんともいえない解放感に浸りつつ、
ゆっくり立ち上がりあたりを見回した。

広くて、何もないが、ここは何となく落ち着いていた。
気分も徐々に晴れ晴れして来ているのを、じっくり、
そして細かく観察できる不思議な感覚だった。

それらを感じ尽くした後、ONIはゆっくりと深呼吸をしてみた。
するとそれを待っていたかのように、場は”サッ”と入れ替わり、
何か心まで揺れそうな曲線を多く使っている優雅なデザインが
カベや天井の部分に現れていた。

「アレ〜」と、この変化にさほど驚くこともなく、ONIはまた回りを見回してみた。

すると、2人の人間のような姿がぼんやりと見えて来た。
現実が一瞬、蜃気楼のように揺らいだそんな気もしたが、
1人はあの”ヨーさん”だった。

「あっ、”ヨーさん”、やっぱり来てたんだ」
ONIは、うれしそうに声をかけた。

それに対して、”ヨーさん”は笑顔を示した。

ONIは、さっそく『ここはどこ』と聞こうと思ったが、
それより一瞬早く”ヨーさん”は、下を見るように合図した。

その合図に従って、ONIが下を見ると、自分のいるそこは空中で、
下には祈っている4人の姿が見えていた。

この感じから見て、10〜20mぐらい上空の位置から4人を見ている感じだ。
足元は透明で、下はよく見えるが、床はしっかりした感覚があったので安心していた。
というより、空中であるのに何の恐怖も生じてなかった。

「”ヨーさん”ここは」

ONIは、心の底から知りたかったことを聞いてみた。

すると、
「どこだと思う、ONIさん」
と、あっさり返されてしまった。

ONIは、少し考えてヒラメいたように言った。

「これが”壺中天”やろ」

「いい線だけど少し違うな」
と”ヨーさん”は微笑みながら言った。

「なんだ、じゃあ、王の間か」

「近いけどおしいね」

「わかった、シップやろ、シップの床を透明にしているわけだ」

「そうだね、ほとんど正解だね」
”ヨーさん”は、何かを秘めたように笑った。

その時だった。

ONIの前にあったテーブルに霧状の何かが出現していた。

少し驚きながらも、それをジッと見つめていると、目が離せなくなり、
見入ってしまっていた。

先ほどと同じように揺らぎが起こって、しばらくすると、
そこにエリザベスが座っていた。

「おお、ようやくお目覚めか、遅いのー」
と、何か知らんが仕切ったようにONIはしゃべっていた。

”ヨーさん”がそれを微笑ましく思ったかどうかはわからなかったが、とにかくONIは
少しうれしかったので、いつもの癖で、偉そうに言ってしまったのだ。

エリザベスは、寝起きのような声で
「ONIさんここは・・・」とONIに質問していた。

「あ、あぁここか、ここは・・・」

ONIが、言いよどんだと同時に”ヨーさん”が言った。

「ここが、日本語で記録されている言葉で”虚空”だよ」

それを聞いてエリザベスは、すべてを理解したような顔つきで
「あぁ、虚空会の虚空ね」と悟ったように言い切った。

すると”ヨーさん”が答えた。
「そう、その虚空だよ」

その会話を聞いて、驚いたONIが言った。
「ブッダの至高の教えとされる、真の教えのあの虚空会の虚空、ここが・・・?」

ONIは、この時にわかに信じがたいと少しの時間思ったと記憶しているが、
即座にそれが本当であるという力強い感覚がハートの中に輝いた。

「と、なると”ヨーさん”龍王もここから?」

「いや、”龍王さん”は、壺中天から出るよ、もうすぐ」

「どういうこと?」

「なんで?」

ONIとエリザベスは、同時に思い思いの質問をした。

「龍王さんは、隣の部屋に待機してたんだよ。呼べる人間が呼ぶまでね」

「誰も呼んでくれなきゃどうする気や」

この時、いつものONI節がついつい出てしまった。

それを聞いた”ヨーさん”は笑いをこらえきれず、大笑いした。

そして、

「ONIさんは、面白いよ・・・久しぶりにそんな思考パターンを味わったよ、変だね」

きょとんとしているONIとエリザベスに”ヨーさん”はゆっくりと告げた。

「シナリオの大筋は決定しているからね。龍王は呼ばれてお出ましになる」

「出ると、何がどーなる?」

「それは、答えられない。人間しだいだね」

”ヨーさん”のこの言葉から、いいことばかりでもなさそうだなと思った2人だった。

※ ※ ※

少し落ち着いてきた2人は、あたりを見渡してビックリした。
何か得体のしれない生物が””ヨーさん”のすぐ向こうに寄り添っていたからだ。

ONIはどうしたことか、少しかしこまってしまった。

エリザベスは、「あなたが”ヨーさん”でしたの、すごく若くてハンサムですね」
と、あらためて”ヨーさん”にあいさつをした。

ONIは、「え〜っ、何言ってるんやー」と思った。

だが、そんなことは少しも気にしていないエリザベスは、
続けて「あなたが、トダナー君ね」
と、”ヨーさん”の横の変てこな生物に向かって親しげに語りかけた。

「ムアン、ムア〜ン」

変な生き物は言葉を発した。

この言葉を聞いて2人の心の中で根源のエネルギーが再生され
胸も体も温かくなってしまった。

それを受け、ONIは、うれしそうに返事をしてしまった。
「ハロウ、わしがONIです。どうぞよろしく、ええっと、ト.ダ.ナーくん・・・
アッ、本当にトダナー君でええの」

「ああ、彼はトダナー君、エリザベスさんとはすでに友人だね」

そう”ヨーさん”が言い終わるのを待ちきれないように、
「そうよ」とない胸を張ってエリザベスが答えた。

「おまえ、何でわしに黙って、つきおーとんや、こんな・・・まぁええけど」

「テレパシーみたいなので何回か話したことがあるだけよ。S氏の友達の
サラマンダー君の子供なのよ、トダナー君はね」

「えぇーっ、まじかよ・・・」

それを知ってONIがまじまじとトダナー君の方を見ると、
なんだかくっきり見えて来たではないか。

うすいピンクのアラブの人が着るような長いワンピース(ガラベーヤ)に、イルカっぽい
色の張りのある肌、ピコピコ動かしているのは、しっぽのようなものだろうか。

「これはシッポです」

と、ONIの内なる世界でもトダナー君のテレパシーが再生されていた。

「へぇ〜、トダナー君、テレパシー使えるの、まぁまぁやるじゃん」
なおもONIは、自分を上に置いたように偉そうにしゃべってしまった。

すると、トダナー君から何の返事もないのにエリザベスがしゃべり始めていた。

「そうなの、この人そういう所があるんだけど、そこがまた味があっていいのよ」

ONIは、いぶかしがって3人をじっと見てると、どうやらONI抜きで
会話しているらしかった。

ONIには、エリザベスの声しか聞こえていない。

「うわぁ、ヤバイ、わし、会話が聞こえん」

とONIが秘かに動揺した時、”ヨーさん”がONIに向かって何かを
言ったように見えた。

すると、
「ONIさん、テレパシーの基本は”愛”だよ」
と、聞こえた。

ONIは、一瞬ですべてを理解し、いつも謙虚さに欠ける自分を反省した。

だがすぐに、エリザベスがついてくるから、こんなことになったんや、
わしのせいやない。

エリザベスがおるけん、つい、かっこつけてしまうんや。
くっそ〜。わしゃなーんも悪ない。

あっ、ちょい待て、このパターンは良ーない。悪いクセやな、未開人の・・
けんきょ、けんきょ、内的コントロール。

フゥー、OK、OK。大丈夫か。
うんうん、大丈夫、わし、大丈夫。
ヒューッ。今の誰も気づいてないやろの。

「あっーはっははは」
笑い声は、エリザベス。

そして、トダナー君に”ヨーさん”も笑っている様子だ。

やっぱりバレてたか。しゃーない。

すると、またどこからか”ヨーさん”の声がした。

「大丈夫。エリザベスさんだけは気付いてないよ」

ほっとしたONIは、すぐ立ち直っていた。
「ところでエリザベス、なんで”ヨーさん”にお世辞なんか言うんや。
”ヨーさん”はなんぼなんでも若こーてハンサムとは違うやろ
もうちょっと言いようってもんがあるやろ」

「エーッ、何で、若くてハンサムよ。それに髪は金髪だし」

「うへぇ、おまえ、何言うとんじゃ。”ヨーさん”はどー見たって
初老のおじさんやんか、アホか」

「ハッハハハ・・・」

アッ アッ アッ」

これには、”ヨーさん”も、トダナーくんも大喜びだった。
そして、たまりかねたように”ヨーさん”は真相を告げた。

「ONIさん、ボクの姿は見る人に合わせて様々に変化するんだよ。
人それぞれの心の持ちようでね、そういう風に設定してあるんだよ」

「ええー!!」

びっくりしたONIだったが、すぐにそういうことかと納得した。

そこでエリザベスが一言だけ発した。

「観音」

それを聞いてONIも腑に落ちた。

「そうか、観音菩薩とかは、33変化身、救う相手に合わせた姿で現れるって、
真の教えに書いてある、あれってこういうことか・・」

”ヨーさん”は、そこまで聞いてからこう付け加えた。

「君たちも、今の姿は本物ではないよ。だってほら
体は下で祈っているからね、アッハハハ」

「・・・・」「・・・・」

ホへーという顔でお互いを見つめあう2人に、さらに”ヨーさん”は告げた。

「まあ、お互い様だ。それにこっちの世界では、あまり外見には重きを置かないからね、
少しずつ慣れていけばいいよ、それにもう気が合ってくる頃だ。」

2人は、ポカーンとして聞いているだけだった。

この時、ONIには、”ヨーさん”が、光り輝く青年に思えて来た。

「慣れるって”ヨーさん”、わしら下に帰らんで大丈夫かいな」

ONIは、浮かんで来たことをそのまま口にした。

「そりゃ、大丈夫だよ。時間はたっぷりある。なんたって、6秒は最低でもあるからね。
充分すぎるほどの『時』が君たちには与えられている」

”ヨーさん”は、このように答え、微笑んだ。

すると、ONIにも、”ヨーさん”が、かっこいい青年に見えてきた。

「じゃあ行こうか」

「おぉー」

みるみる下の4人が遠ざかって見えたが、アレッ少し変だなとONIは気付いた。

なんだ最初からこんな高い所にいて、床のスクリーンに下の様子をズームしてたのか。

「そのとおり」

”ヨーさん”がONIの心の声に答えていった。
そして最高の言葉を付け足してくれた。

「虚空といえば、天空500由旬(ゆじゅん)だね」

「うおぅー最高やぁー!」

ONIはこれ以上の幸せはないというような声で叫んだ。

とんでもない冒険の予感が「体脳気魂」を刺激しつつも

これにて


(完)

つづきは、あるともないとも言えない。
















































































































































































































































































































































































































































































由旬とは

一日に牛車が
すすむ距離のこと
仮に10〜15キロ
とすると500由旬は
5000〜7000キロ
ということになる。








この物語はフィクションです このページのトップへ



SJの世界へ戻る    壺中の龍王へ




プレアデスと月と金星の写真は友人のTMさん撮影